作業成果物と情報項目 Automotive SPICE 4.0のアセスメント指標の変化
Automotive SPICE V4.0に更新され、アセスメント指標が変更されたことをご存知ですか?今回のAutomotive SPICE V4.0に関するコラムは、アセスメント指標についてお届けします。
アセスメント指標とは
プロセスアセスメントの関する国際規格の1つである、ISO/IEC 33004では、プロセスアセスメントモデルは、能力レベルを評価するために、アセッサの判断の拠り所として「アセスメント指標」を定義することを要求しています。
プロセス成果やプロセス属性達成成果の有無を判断するために、対象プロジェクトの作業成果物や管理者・開発者の証言を、この「アセスメント指標」にマッピングすることで、達成度合いを評価します。
Automotive SPICEにおいてもアセスメント指標を定義していますが、V4.0への更新に伴い内容が更新されましたので、ご紹介します。
Automotive SPICE V4.0におけるアセスメント指標
V4.0では、プロセス実施指標とプロセス能力指標の定義がなくなり、単に2つの指標として、プラクティスと情報項目を定義しています。
- プラクティス:活動重視の指標
- 情報項目:結果重視の指標
プラクティスは、V3.1と同様に、基本プラクティスと共通プラクティスの2種類となっています。
- 基本プラクティス(BP):能力レベル1に適用。プロセス成果の達成程度を示し、プロセス固有のものである。
- 共通プラクティス(GP):能力レベル2~5に適用。プロセス属性の達成成果の程度を示し、全プロセス共通のものである。
情報項目(II)は、プロセス成果およびプロセス属性の達成成果の達成を構成するものとしており、情報項目特性(IIC)含まれます。
V4.0では、アセスメント指標がシンプルになり、理解しやすい構造になっていますね。
作業成果物と情報項目の違い
プラクティスに変更はありませんが、V3.1で定義されていた作業成果物や共通リソースが、情報項目に変更されました。
それでは、作業成果物と情報項目にはどのような違いがあるのでしょうか?
V4.0では、以下のように定義しています。
- 情報項目:アセッサーがプロセス属性の達成成果を判断するために使用される関連情報の一部分を定義している。
- 作業成果物:プロセスを実施、管理、確立、分析、および革新する際に、アセスメント対象組織によって生成されるものである。
情報項目(II)は、アセッサーがアセスメントにおいて、作業成果物を調査する際に、「何を見るべきか」のガイダンスとして提供されているものであり、作業成果物そのものではありません。
また、情報項目に含まれる情報項目特性は、情報項目の潜在的な特性の例を示しており、作業成果物のチェックリストとして使用されることを意図していません。
言い換えると、作業成果物はプロジェクトが生成した(生成すべき)ものであり、情報項目はアセッサーが調査の拠り所をするものなので、両者を同一と理解してはいけないことになります。
作業成果物と情報項目(情報項目特性)の関係は以下のように整理されています。
- 作業成果物は、複数の情報項目特性から構成される場合がある。
- 複数の作業成果物が同一の情報項目特性を有する場合もある。
- 作業成果物は、情報項目とは別の名称で呼んでもよい(名称は重要ではない)。
- 構造や帳票が異なる作業成果物が存在しても良い。(例:課題をエクセルとチケットシステムで管理)
例えば、V3.1の作業成果物「ソフトウェア要件仕様書」は、V4.0では、「要求」と「要求の属性」に変更されています。
これは「ソフトウェア要件仕様書という文書が存在しないといけない」ということではなく、基本プラクティスを満たした結果として、情報項目や情報項目特性が含まれているのであれば、「ソフトウェア要求仕様書」や「ソフトウェア仕様書」でも良く、複数の「ソフトウェア仕様書」に分冊されていても良いことを示しています。
さいごに
いかがでしょうか?
システム開発やソフトウェア開発に携わっている方にとって、V3.1で求められていた作業成果物を生成することを意識するのではなく、皆さんの組織や開発している製品の特長に合わせて、V4.0で求めれている情報項目や情報項目特性を満たした作業成果物の構成や形を検討してみることが大切なことだと思います。
内山 哲三