Automotive SPICE 4.0におけるSYS・HWE・MEEの適用範囲について
Automotive SPICE 4.0 に関するコラムの第3弾は、システム領域の適用範囲についてお届けいたします。
そもそもシステムとは?
一言に「システム」といっても、人によってその定義や解釈は様々です。Automotive SPICEでは、システムを以下のように定義していました。※1
- 特定の環境内において、特定の機能または一連の機能を実現するために編成された相互作用のあるアイテムの集合。
さらに、この相互作用のある「アイテム」を、Automotive SPICEでは、「識別可能なシステムの一部」とし、ハードウェアやソフトウェア、下位のシステムといった構成要素と位置付けていました。つまり、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたものをシステムとしています。
しかし、この定義に準ずると、自動車もシステムであり、自動車を構成する駆動システムやECU、範囲を広がると車車間通信の仕組みも「システム」として解釈することができます。この解釈自体に間違いはありません。
それでは、Automotive SPICEのシステムエンジニアリングプロセス(SYSプロセス)は、どんな製品を対象に、どのように適用すれば良いでしょうか?
SYSプロセスの適用範囲
Automotive SPICEは、様々な製品に対してアセスメントできるように考えられたプロセスモデルですので、製品の階層構造を表現したものにはなっていません。これは、ガイドラインでも明確に記述されています。しかし一方で、ガイドラインでは、「製品の階層構造の各レベルでシステムエンジニアリングプロセスを適用することができる」とも記述されています。
少し具体的な例が掲載されているのでご紹介します。
階層的なシステム開発の例:
- メカトロニクスシステムや駆動システムは、メカトロニクス製品であり、メカトロニクス製品を開発するサプライヤには、SYSプロセスが適用可能である
- ECUは制御デバイスであり、一般的にハードウェア、ソフトウェア、ケース、コネクタ等で構成されるため、ECUを開発するサプライヤには、SYSプロセスが適用可能である
- 完全に組み立てられたPCBを開発するサプライヤには、HWEプロセスを適用するべきである
半導体開発の例:
- マイコンやSoC等の半導体は、一般的にハードウェア、機械的な筐体、ファームウェア等で構成されるため、サプライヤには、SYSプロセスが適用可能である
さいごに
いかがでしょうか?これらからもわかるように、ECUの開発だけでなく、複数のECUやセンサー、アクチュエータで構成される上位システムに対しても、SYSプロセスが適用可能であること、さらには、ECUの構成部品である半導体を開発する際にも、SYSプロセスが適用できることがわかると思います。
皆さんが開発する製品の階層構造に合わせて、多段的にSYSプロセスを適用することを検討してみてください。
内山 哲三
※1:Automotive SPICE 3.1における定義です。Automotive SPICE 4.0で明示的な定義がなくなりました。また国際標準である、ISO/IEC 26702 IEEE Std 1220-2005では、製品(ハードウェア+ソフトウェア)だけでなく、製品と使用する人や、使用する際に利用する設備や機材、手順もシステムの一部としていますが、今回はAutomotive SPICEでの定義を活用して、わかりやすく解説しています。