Automotive SPICE GP 徹底解説 その3 ~ そもそも能力レベル2とは?
これまで2回にわたって Automotive SPICE の GP(General Practice)について解説しましたが、今回は「能力レベル2って、どういう状態なの?」というテーマでお届けいたします。
本題に入る前に、「プロセス」って何でしょうか?
と聞かれても、皆さん明確には答えにくいのではないでしょうか? 最近流行りの生成AI君に尋ねてみると:
- プロセスとは、物事がある結果に達するまでの道筋や手順、方法を意味します
- 類義語には、「過程」、「経過」、「手順」、「工程」などがあります
と答えてくれました。 そもそも カタカナ で書いてあることから「プロセス」は日本語由来のものではなく、類義語ででてくるように人によってそれぞれの解釈で日本語に当てはめているものと思います。 アセスメントのインタビューで、「私達にはプロセスはありません」という発言を聞くことがありますが、この言い回しは正しくありません。 アセスメントの場では、発言者は「プロセス」 = 「手順を文書化したもの」 と勘違いしてしまっているのです。 何らかの成果物が生成されている限り、そこに至った過程、経過や手順は存在するはずです。
次のような2つのグループがある場合、あなたならどちらのグループに仕事を依頼したいですか?
グループA
-
- 計画書を作成して、作業状況を計画に照らしてチェックしている
- あらかじめ作成すべき作業成果物を決めて、ドキュメントを管理している
- 作成したドキュメントは、必ずレビューを実施して誤りを訂正している
グループB
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- 計画書はなく、グループ員にヒアリングしないと状況はわからない
- 作業成果物は担当者の申告ベースで、何があるか、何処にあるかはわからない
- レビューは実施せず、担当者の力量に任せている
これだけでは、どちらのグループが良い成果物を納入する可能性があるか判断できませんが、グループBの方は、よっぽど優秀なメンバーが揃っていないと任せるのは怖い感じがしませんか? この2つのグループの違い、つまり仕事の仕方の違いがプロセス能力の違いなのです。 アセスメントでは、プロジェクトにおける仕事の仕方および作成された成果物の十分性を判断して、プロセス能力を判定しています。
ではプロセス能力レベル2とは、どんな状態なのでしょうか? 次の2つがポイントとなります
- 作業が計画的に実施できているか?
- 作業成果物が管理され、成果物の品質がチェックされているか?
つまり、この2つの仕組みができていれば、プロジェクトに携わる人が変わったとしても、繰り返し一定レベルの成果が期待できるということなのです。 このようなプロセスの状態になっているプロジェクトを「能力レベル2」と呼ぶというのが、アセスメントの評価基準になります。
アセッサーによっては重箱の隅をつつくように細かいことを指摘する人がいますが、極めて基本的なことだと思いませんか? Automotive SPICEでは、PA(Process Attribute)とGP(General Practice)を能力レベル2の判定基準として定めています。事例も含めて表にまとめてみました。それほど高い壁ではないと思いますので解釈の参考にしてください。
また、GPとプロセスには上図に示すような密接な関係があります。GPを十分に実現するためには、対応するプロセスで定義されるBP(Base Practice)の内容を実施しておく必要があると読み替えてください。
文書だけでは、わかりにくい領域だと思います。 弊社ではAutomotive SPICEに関する無料相談会(ミニコンサル)も実施していますので、お気軽にご相談ください。
日吉 昭彦